ハリネズミの直腸脱(前篇)
2016-03-14 17:29
有限会社もねペットクリニック
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こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの直腸脱です。

エキゾチックアニマルは、鳥類も爬虫類も直腸脱が多いと感じています。

以前、フェレットの直腸脱についてコメントさせて頂きました。

直腸脱がなぜ生じるか、イラストを含めて詳説しておりますのでご興味のある方はこちらをクリックして下さい。




ヨツユビハリネズミのまりぃちゃん(雌、5歳)はお尻から黒いものが出ているとのことで来院されました。

お尻周りの疼痛のためか、不機嫌な表情を示しています。



ハリネズミはすぐに体を丸める傾向があり、今回肛門周囲を確認したかったのですが上手くできません。

焼き魚用の網に乗ってもらい、下から肛門を診てみます。

下写真黄色丸が肛門から突出している直腸です。



既に脱出した直腸は色が暗赤色になり、血行障害を疑います。

場合によっては、直腸が壊死してるケースもあります。

ハリネズミの病変部を確実に視診するためには、全身麻酔を実施しなければならないことが多いです。

まりぃちゃんを全身麻酔することとしました。



麻酔導入箱(上写真)にまりぃちゃんに入ってもらい、導入麻酔としてイソフルランを流し込みます。



段々麻酔が効いてきます。



完全に麻酔が効いて来たところで、麻酔導入箱を出てもらいます。

自作の専用マスクに切り替えて、維持麻酔を実施してます。



この状態で初めて、患部の詳細を診ることが出来ます。

下写真黄色丸が脱出している直腸です。



直腸の傷の有無や血行状態の確認のため、脱出した直腸を洗浄消毒します。





直腸は一時的に血行障害になってますが、整復することで十分回復すると判断して直腸を元に戻すことにしました。

直腸に抗生剤軟膏を塗布し滑りを良くします。





次に注射器の押し子を当てて、ゆっくりと整復して行きます(黄色矢印)。



直腸を傷つけないようにゆっくりと押し戻していきます。





無事、直腸はもとに戻りました。

しかし、このままでは再脱出してしまいますので、肛門の端を縫合して肛門を絞り込むことで脱出を防ぎます。









今回のまりぃちゃんの脱出は厳しい感じでしたので、肛門の両端部を2か所縫合しました。



直ぐに覚醒しました。







あとは、この状態で排便がしっかりできれば大丈夫です。

しかしながら、まりぃちゃんは翌日に直腸が再脱出してしまいました。

患部の写真です。



脱出しやすいということは整復しやすいという事でもあります。

比較的簡単に直腸は整復できました。



直腸が再脱出した時に縫合していた部位は1か所しか残ってませんでした(下写真黄色矢印)。

まりぃちゃんの腹圧に対して肛門の絞り込みが弱かったようです。



再脱出を予防するため、むらなく均等な力で肛門周囲を絞り込める巾着縫合を採用することにしました





肛門の外周に沿って縫合糸を縫い込んでいきます。







縫合糸の締結がきついと排便障害になりますので、綿棒を肛門内に挿入して(下黄色矢印)、締結の調整をします。



縫合糸の締結と同時に綿棒を抜き取ります。



これで直腸脱の整復は完了です。



フェレットの直腸脱をご覧いただいた方はもうお気づきかも知れません。

フェレットのぺんね君のケースと同様、まりぃちゃんも再脱出を繰り返す難治例と言えます。

直腸脱の非観血的に整復が難しい症例(今回のまりぃちゃんもそうです)は、最後は救済的処置として脱出してる直腸を切断して縫合する外科的アプローチが必要となる場合も多いです。



まりぃちゃんはこの巾着縫合の処置後、10日目にして残念ながら再脱出してしまいました(泣)。



次回は、まりぃちゃんの直腸切断手術をご紹介いたします。

乞うご期待下さい。




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