インドホシガメの痛風結節
2016-03-09 16:59
有限会社もねペットクリニック
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こんにちは 院長の伊藤です。

ヒトは中高年になりますと、日常的な食生活(アルコール、甘いものの多量摂取等)も相まって痛風という疾患になる場合があります。

ヒトでは、高尿酸血症により関節に尿酸の結晶が溜まって疼痛を生じます。

カメの場合も、ヒトと同様に痛風という疾患は存在し、疼痛による食欲不振、歩行困難などの症状が認められます。

今回、ご紹介しますのは,そんなリクガメの痛風です。



インドホシガメのマル君(年齢不明、雄)は右後肢の膝関節にしこりがあるとのことで来院されました。



膝の部分が大きく腫れている(黄色丸)のがお分かり頂けると思います。



患部を拡大します。

触診では非常に硬い組織です。



よくよく診てみますと右膝だけでなく、左の手根関節、頚腹部に腫瘤が認められます。

下写真は頚腹部の腫瘤です。



次いで左手根関節の腫瘤です。



まず、腫瘤の原因を確認するため、患部の細胞診を実施しました。

注射針で患部を穿刺して細胞を吸引します。







それぞれの患部から針生検した細胞は下の顕微鏡所見が共通していました。

低倍率画像です。



高倍率画像です。

緑の矢印は爬虫類に特有の有核赤血球です。

黄色丸はリンパ球です。

赤丸は哺乳類で血小板にあたる栓球です。



腫瘤本体の組織は硬く、その組織を取り巻く肉芽組織の細胞だけは吸引することが出来ました。

その肉芽組織の内容が上の顕微鏡写真画像を構成する、いわゆる炎症系細胞群です。

腫瘤の実態が細胞診では確認できない状況ですが、おそらくリクガメに見られる痛風結節と思われます。

痛風結節を構成する尿酸ナトリウムの結晶は硬く、注射針では上手く結晶体の吸引は出来ないようです。

痛風結節自体が組織にとっては異物になります。

生体内の異物は免疫系の細胞群により攻撃を受け、最終的に肉芽組織を経て吸収され、本来の組織に回復します。

しかしながら、ほぼ石に近い性状の痛風結節は吸収されることはなく、大きさによりますが外科的に摘出した方が良い場合が多いです。



リクガメの痛風が起こる原因は、高蛋白の餌を多給することにあります。

高蛋白の餌とは、モロヘイヤ、ナバナ、アシタバ、カラシナなどが挙げられます。

高蛋白状態が続くと血中の尿酸が増加し、高尿酸血症を招きます。

結果として、尿酸ナトリウム結晶が形成されて関節・軟骨や皮下組織・腱などにコブ状の肉芽腫を作ります。

この肉芽腫を称して痛風結節と言います。




今回、飼い主様から外科的摘出は希望されませんでしたので鎮痛剤を処方し、高蛋白の食餌を改善するようアドバイスさせて頂きました。

爬虫類は、食餌管理・飼育環境を見直すことで多くの疾病を予防することが出来ます。





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