こんにちは 院長の伊藤です。
いよいよ、当院も今年の診療は昨日で終了となりました。
一年を振り返ると、私はほぼ毎日手術をしていました。
手術で治って元気になられた子もいれば、力及ばず亡くなられた子もいます。
全ての動物たちが元気に過ごせるよう祈念いたします。
さて、本日ご紹介しますのは
痛いお話です。
釣りのルアーをみなさんご存知でしょうか?
ルアーは、ルアーフィッシングでの釣りに使用する道具のひとつで、針が付いていて、動きや色、匂い、味などで、直接魚を誘う物の事を言います。
このルアーに興味を持って匂いを嗅いだりして、鼻や口に針が刺さったらどんな状況になるか、想像しただけでも怖いですね。
イングリッシュ・コッカ―スパニエルの
えるちゃん(雌、5か月)はルアーの針が鼻に刺さったとのことで来院されました。
下写真の黄色矢印がルアーの針が鼻を貫通している部位です。
患部を拡大した写真です。
まずルアーの自重で
針の返しが鼻に食い込みますので、針とルアー本体を離断します。
釣り針は返しが付いています。
この返しの部分が、魚の口などに食い込んだ時に針が外れぬよう工夫されています。
この時、無理に針を外そうとすると大きく組織を損傷します。
今回の様に鼻に刺さってしまうと無理に外そうとすれば、返しの部分で鼻腔内を傷つけ、予想外の出血を招きます。
そのため、刺入位置よりもさらに針を奥に突き刺して、返しの部分を鼻の外に突き出します(下写真)。
そして、返しの位置より針の付根に近い位置をニッパーでカットします。
下写真はニッパーでカットしたものです。
鼻腔内に刺入している針2か所をカットしますと後はすんなり針は下に引けば取れます。
下写真は針が抜けた瞬間です。
えるちゃんは患部からの出血はなく、思いのほか痛みも最小で済んだようです。
処置後、抗生剤と鎮痛剤を処方しました。
診察開始から5分で終了した処置ですが、生理的に痛々しいアクシデントでした。
えるちゃんは我慢強く、穏やかな性格であったのが幸いしました。
気が強い個体ですと麻酔処置が必要になったりしますが、それはそれで大変です。
取り出したルアーとその針です。
下写真黄色丸の針が鼻腔内に刺入しており、返しから上の部位をカットしました(黄色丸)。
最後に飼主様とのツーショットです。
えるちゃん、お疲れ様でした。
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