フェレットの直腸脱(後編 ぺんね君救済計画)
2015-12-07 14:45
有限会社もねペットクリニック
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こんにちは 院長の伊藤です。

先回、フェレットの直腸脱(前編 ぺんね君の受難)をブログに載せました。

今回はその続きで、ぺんね君の直腸脱を手術で治す内容となります。


フェレットのぺんね君(去勢済、2歳8か月)は直腸脱になり、脱出した直腸を戻して外肛門括約筋を縫合糸で絞り込んで、再脱出を防ぐ方法で対応しました。

しかしながら、2か月間で5回の再脱出を繰り返すことになりました。

ここまでが先回のブログ内容となります。

詳細はこちらをクリックして、ご覧下さい。




直腸脱4回目にして、肛門周囲を巾着縫合で絞り込み、何とか完治に持っていきたいと思っていたのもつかの間。

腹圧上昇に伴い直腸が、患部を突破して再脱出しました。



脱出している直腸の粘膜面(下写真黄色丸)も大きく腫大しています。





出血も伴い、このまま同じ処置を継続しても、回復の見込みは少ないと思われました。

そのため、外科的にしこりになっている直腸粘膜面を離断し、腸管を縫合して戻す方法を飼い主様に提案させて頂きました。




術式をイラストで表すと以下の通りです。

現時点でぺんね君の直腸は脱出し、粘膜は高度に炎症を起こしています。


脱出している直腸壁に支持糸を何ヶ所かにかけ、直腸を外に牽引します。

腫大している直腸粘膜面を離断します。

下のイラストは離断した直腸の断面です。

断面は二重に織り込まれているため、縫合糸で丁寧に縫い込んでいきます。



縫合が完了した時点で支持糸を離すと直腸は腹腔内に戻ります。

あとは縫合部が綺麗に吻合するのを待ちます。







飼い主様の了解を得て、早速外科的にアプローチをします。

ぺんね君の患部を洗浄消毒します。





脱出した直腸の拡大写真(黄色矢印)です。

ブログ前編時よりも腫大しています。



全身麻酔を施し、手術に移ります。





向かって右側が直腸のしこりです。

直腸壁に支持糸をかけて牽引したところ、直腸壁に裂け目が生じているのを確認しました。

この裂孔を縫合します。





直腸壁の縫合は完了です。



これから本題に入ります。

前述のイラスト通りにしこりの付根をメスで離断します。





離断すると直腸壁からの出血が認められます。



患部を洗浄します。



滅菌綿棒で患部を圧迫・止血してから直腸壁の縫合に移ります。



前述のイラストのように、直腸粘膜は2重に内反しているため、吸収性のモノフィラメント糸で細かく縫合します。



フェレットの直腸壁は犬に比べて薄いため、2重の内反している粘膜を縫い落とすと、後ほど腸管が狭窄します。

最悪、腸管に穴が開いた状態になりますので、糞便が腹腔内に漏出して腹膜炎になるため注意が必要です。







患部の縫合がしっかりできているのか、滅菌綿棒を腸管内に挿入して確認します。



綿棒が、腸管内である程度余裕をもって前後に可動できるか確認します。





下写真が腸管縫合の完成形です。



ここで支持糸を外します。

牽引力が無くなると腸管は腹腔内に戻ります。



これで手術は終了となります。

あとはぺんね君には安静にして頂き、消化に良い食餌を暫く摂ってもらうことになります。




手術翌日のぺんね君です。

表情もだいぶ良くなってます。



お尻の状態です。



私が一番うれしいのは、ちゃんと朝一番で排便がしっかりとできている点です。



入院中のぺんね君です。

フェレットバイトや高カロリー流動食も進んで口にしてます。





今回、離断した腫脹した直腸粘膜部です。



断面を見ますと高度に直腸粘膜が腫れているのが分かります。





断面をスタンプ染色しました。

粘膜上皮細胞に混じって、マクロファージ(黄色矢印)などの炎症細胞が遊走しています。

脱出反転した粘膜面が、床面との干渉で炎症を起こし、血行障害による浮腫を起こしていました。





結局、ぺんねは1週間ほどの入院となりましたが、術後の経過は良好です。

退院直前のぺんね君です。




退院1週間後のぺんね君です。

便通も問題なく、直腸脱になる前と同じ良好な排便が出来るようになっています。



お尻の状態です。

肛門周囲は炎症も治まり、綺麗になりました。



2か月余りの闘病生活でしたが、元気に回復されて良かったです。

ぺんね君、お疲れ様でした!





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