こんにちは 院長の伊藤です。
本日は久しぶりにカメレオンの話題をさせて頂きます。
カメレオンは樹上生活を送ります。
野生の個体は自身にとって、つかまりやすい枝ぶりの樹に生息し、適応していきます。
しかしながら、ペットとして飼育されている個体については飼育環境が全てとなります。
飼育槽内の温度・湿度はもとより枝の太さ・硬さも問題を起こすことがあります。
今回は指の間に炎症が起こり、膿瘍が出来てしまった症例です。
今年の4月の話です。
ジャクソンカメレオンのトミー君(キサントロプス亜種、雄、年齢不明)のトミー君は右前肢を気にして、あまり枝をしっかり掴めないとのことで来院されました。
右の前肢を診ますと若干の腫れ(下写真黄色丸)が認められます。
カメレオンは一日中絶えず枝を把持しています。
枝の表面がザラザラであったり、個体の指の間のサイズに合わない場合は、指間の炎症を招くことがあります。
飼い主様にはなるべく今以上の太めの枝を使用するようにお伝えしました。
指間の外傷は際立って認められませんが、念のため抗生剤を処方しました。
抗生剤の内服は継続していただきつつ、今年7月のトミー君です。
3か月経過したのですが、右前肢はさらに腫れが出てきています。
ケージに掴まるのも左前肢だけで、患肢の右肢は把持できなくなっています。
トミー君には再度、抗生剤・鎮痛剤の内服とイソジン外用液を処方させて頂きました。
さらに2か月経過したトミー君です。
下写真黄色丸の幹部ですが、さらに晴れてきました。
幹部をかばって歩行にも支障が出ています。
患部が注射針で穿刺して排膿出来るほどに熟していますので、穿刺することにしました。
穿刺部を軽く圧迫しますと膿が中から出てきました(下写真黄色丸)。
膿はワサビのような緑色を呈しています。
排膿後の患部は随分スッキリして、腫れも収まっています。
排膿した膿です。
患部をしっかり消毒して治療は終了です。
患部は開放創のまま、自宅で外用消毒と抗生剤内服で完治させます。
爬虫類の場合、哺乳類と比較して外傷のダメージは緩やかに進行していくようです。
変温動物であるということもその一因でしょう。
カメレオンにおける飼育環境に由来する外傷の中では、この指間膿瘍は非常に多いと思われます。
前述したように指間に小さな傷が出来ても、時間をかけながらダメージが進行していき膿瘍に至ります。
なるべく指間にストレスのかからない枝を用意していただくのが最善策でしょう。
トミー君、お疲れ様でした!
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