犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)
2015-11-08 17:25
有限会社もねペットクリニック
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こんにちは 院長の伊藤です。

本日、ご紹介しますのは犬の口腔内に生じた悪性黒色腫の話です。

以前にもウサギの悪性黒色腫についてコメントさせて頂きました。

詳細はこちらをクリックして下さい。


犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)は、最も良く見られる口腔内悪性腫瘍とされます。

通常、メラニンを伴う著しい色素沈着が見られる腫瘍です。

皮膚に発生するメラノーマは良性であることが多い一方で、口腔内メラノーマは大部分が悪性腫瘍と言われます。

メラノーマの発生年齢の平均は約11歳と報告され、高齢犬の疾患とされています。

メラノーマは高率で歯肉に発生します。

多くの飼主様は持続的な口臭や口腔内からの出血、嚥下困難を理由に来院されます。



ミックス犬のあずきちゃん(年齢不明、未避妊)は、口腔内に黒いできものがあり、次第に大きくなってきたとのことで来院されました。

あずきちゃんは迷い犬で、たまたま飼主様宅に迷い込んできたそうです。

そのため、実年齢は定かではありませんが、おそらく10歳は超えているでしょう。


下写真黄色丸が口の横にできた腫瘍です。

メラノーマによる悪臭があずきちゃんの口腔内から漂っています。





この腫瘍はどのようなタイプか細胞診を実施しました。

結果は口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)との病理医からの診断でした。

他の部位への転移がないか、各リンパ節を初め胸腔内のレントゲン撮影を実施しましたが、特に転移は認められませんでした。

口腔内メラノーマは転移率が高い一方で、外科手術を初期のステージから施せば苦痛の緩和のみでなく、生存期間を延長させることも可能です。

あずきちゃんは、外科的にこの口腔内メラノーマの摘出手術を受けられることになりました。



メラノーマに加えて、乳腺腫瘍もあり(下写真黄色丸)、これらの腫瘍を一度に摘出することになりました。





患部の拡大写真です。





乳腺腫瘍については、本来腫瘍の近傍の乳房も合わせて摘出するのが常なんですが、飼主様の希望もあり局所の腫瘍のみ摘出することとなりました。







強い力で患部を牽引すると千切れて出血が予想されましたので、バイクランプを使用して摘出することとしました。

大きな腫瘍ですので、栄養血管も腫瘍内に太いものが入り込んでいるため、バイクランプの80℃の過熱で血管をシーリングして短時間で摘出する予定です。



可能な限り健常な口腔粘膜とメラノーマの境界面をバイクランプでシーリングを実施して行きます。









バイクランプの過熱で、手術室は独特な焦げ臭い匂いで充満します。





さらに細かな止血・切開作業はバイポーラの電気メスで進めます。





メラノーマ(下写真黄色丸)を摘出しました。





さらに歯肉表面に浸潤していると思しき箇所には、半導体レーザーで焼烙します。





これで処置は終了です。



乳腺腫瘍も部分摘出完了です。



麻酔から覚醒したあずきちゃんです。



摘出したメラノーマです。



切開した断面です。

腫瘍の内部までメラニン色素が浸潤しています。



この断面をスタンプ染色して顕微鏡で確認しました。



強拡大像です。

腫瘍細胞の細胞質は色素顆粒が認められます(黄色矢印)。



今回の手術は口腔内ということもあり、場合によっては腫瘍が歯槽骨まで浸潤している可能もあります。

マージンを十分に確保して摘出することができない部位でもあり、今後再発する可能性も考えなくてはなりません。

あずきちゃんは外科手術の補助として、化学療法のうち内服薬でしばらくバックアップしていく予定です。

大変な手術でしたが、良く頑張ってくれました。

あずきちゃん、お疲れ様でした!

最後に飼主のお姉ちゃんたちとのショットです。





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