ハリネズミの乳腺腫瘍・リンパ腫
2015-07-23 10:48
有限会社もねペットクリニック
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こんにちは 院長の伊藤です。

最近、ハリネズミ(ヨツユビハリネズミ)の人気が高く、当院ではハムスターの来院数を上回るかもしれません。

そんなハリネズミですが、飼育頭数が増えるにつれ、犬猫同様に様々な疾病で来院されます。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの乳腺腫瘍とリンパ腫です。


ヨツユビハリネズミのうにちゃん(2歳、雌、体重380g)は、左の腋下は大きく腫れてきたとのことで来院されました。

患部は、左の乳房周辺で大きさは3〜4cmくらいの腫瘤です。

うにちゃんは非常に繊細な子で直ぐに丸くなり、顔の写真を撮ることが難しいです。



早速、患部の細胞診を実施しましたところ、乳腺腫瘍であることが判明しました。

細胞診の画像は下の写真です。



日を改めて外科的に手術することとなりました。

手術を実施したのは細胞診を実施してから、諸般の事情で約4週間後のことです。

乳腺腫瘍はこの4週間でさらに大きくなり、加えてうにちゃんの喉周辺に2か所の腫瘤が新たに出てきたとのことです。

喉周辺の腫瘤は外科的に切除してから、細胞を調べることとしました。

まず、うにちゃんに全身麻酔をするために麻酔導入箱に入って頂きます。





麻酔が効いてきたところで、維持麻酔に切り替えます。

下写真の黄色丸が乳腺腫瘍、赤色丸は新たに出来た腫瘤です。



拡大するとかなり大きい腫瘍であることが、お分かり頂けると思います。



全身麻酔が安定してきたところで手術に移ります。



まず皮膚切開から始めます。



皮膚を切開しますと腫大した乳腺腫瘍が認められます。



出血を最低限に抑えつつ組織を分割していきます。







太い血管はバイクランプでシーリングしていきます。



バイポーラで微細な出血巣を止血して行きます。





本来ならば乳房を含めて皮膚ごと切除したかったのですが、小さな個体なので皮膚再建のためにテンションをかけて縫合する事が困難です。

結局、皮膚は最小限の切開に留め、皮下組織の腫瘍を分割して切除しました。

下写真は切除後の患部です。



患部を縫合します。



次に喉周辺の腫瘤(赤丸)を摘出します。



皮下組織に出来た6?ほどの2つの腫瘍です。





乳腺腫瘍の部位は摘出時の出血により、皮下が暗赤色になっています。



術後の抗生剤を注射しています。



覚醒したうにちゃんです。



摘出した乳腺腫瘍です。

断面では既に細菌感染により乳腺炎を起こしているのが判明しました。





うにちゃんは、ほどなく全身麻酔から覚醒してケージ内を徘徊し始めました。



喉周辺の皮下腫瘍ですが、細胞診を実施しました。

その低倍像です。



高倍像です。

多数の中型から大型異型リンパ球が認められ、リンパ腫(皮膚型)であることが判明しました。



うにちゃんは術後2日で退院されました。

ただリンパ腫であるため、ステロイド剤(プレドニゾロン)での治療が今後必要となります。

自宅では食欲もあり、元気も術前より出て来ました。

それでも、術後18日目に逝去されました。

力及ばず、残念です。





ハリネズミは腫瘍発生率が高い動物です。

文献によれば、病理解剖したハリネズミの約30%で腫瘍が確認され、そのうち85%は悪性腫瘍で約10%で2種類以上の腫瘍が確認されているとのことです。

今回のうにちゃんも乳腺腫瘍に加えてリンパ腫が合併症で発生したようです。

ハリネズミのリンパ腫の発生原因は不明とされていますが、一部でレトロウィルスが関与しているとの報告があります。




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