一般の動物病院の診療で遭遇する疾病は皮膚病が一番多いとされています。
特にしつこくなかなか完治に結び付かない皮膚病の一つに、今回取り上げる毛包虫症があります。
この毛包虫は別名ニキビダニ、あるいはアカラスとも呼ばれています。
芋虫みたいな形状が特徴です。
下の写真が当院でみつけた毛包虫です。後にご紹介する毛包虫症のシーズ君から分離されたものです。
毛包虫は疥癬、ノミと同じ外部寄生虫の仲間です。
疥癬やノミは皮膚に寄生しますと必ず皮膚病を引き起こしますが、この毛包虫は毛穴に潜んでいても平常時は何も皮膚病を引き起こすことはありません。
毛包虫は哺乳類全般に寄生しています。
今回は犬の寄生例をご紹介しますが、ハムスター・シマリス・フェレット・猫等にも寄生例をたくさん経験しています。
当然のことながら、我々人間にも寄生しています。
宿主が健康であっても、その皮膚に少数派寄生しており一般には無症状です。
毛包虫の感染経路は、
授乳時に母犬から感染し、その後は同じ子犬の体内で生涯を全うし、
通常他の犬へ感染はしません。
感染を受けた犬と長期間同居しても正常犬では、毛包虫症は発症しません。
宿主との共生関係が崩れると毛包虫は過剰に増殖し、毛包虫症を引き起こします。
発症原因は免疫力の低下・遺伝の関与・皮膚の状態・毛包内の細菌叢等が考えられています。
しかし、その病理発生は複雑で十分な解明がされていません。
毛包虫症の症状ですが、病変部の範囲から局所性と全身性に、発症年齢から若年性と成年性に区別されます。
下の写真は9歳のシーズ君ですが、非常に多数の毛包虫が皮膚から検出されました。
全身性(成年性)の毛包虫症です。
全身に及ぶ脱毛、痂皮、皮膚のびらん、潰瘍、滲出性出血等が認められました。
このシーズー君のかゆみは酷く、夜中も満足に寝られないほどでした。
毛包虫症(成年性)の治療は完治させることは難しく、投薬で9割位の成功率です。
治療には平均2〜4カ月を要し、場合によっては12カ月かかることもあります。
当院ではイベルメクチンかドラメクチンを皮下注射で週1回、2〜8週間続けます。
このシーズー君の6カ月後の症状は、以下の写真の通りです。
痒みも治まり、ストレスからも解放されてます。
ただ成年性の毛包虫症は、疾患や治療による免疫抑制状態が背景にあり、甲状腺機能低下症や副腎機能亢進症、化学療法等が報告されています。これらの疾病を完治しない限りは、また毛包虫症は再発する可能性があります。
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