ウサギの浸潤性乳腺癌
2015-02-02 11:57
有限会社もねペットクリニック
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こんにちは 院長の伊藤です。

ウサギは子宮腺癌が多いということは、以前からお伝えしているところです。

それ以外にも乳腺に腫瘍が生じるケースもあります。

今回は、高齢であっても乳腺腫瘍、特に悪性度の高い浸潤性の乳腺癌の手術の模様を報告させて頂きます。



ウサギのせきねちゃん(10歳5か月齢、雌)は右の腋下に大きな腫瘤が出来たとのことで来院されました。



下写真尾黄色丸が腫瘤です。

腫瘤はかなり巨大で、床面との接触で出血を繰り返して痂皮が形成されています。



患部を細胞診したところ、腫瘍細胞が認められました。

おそらく、乳房の近くに生じた腫瘍なので乳腺腫瘍の可能性が高いと考えられます。

さすがに10歳を超えたウサギなので、麻酔のリスクはかなり高いと言えます。

ヒトで言えば、90歳から100歳の年齢です。

飼い主様の強い要望もあり、短時間で外科的摘出を試みることとしました。

まずは、静脈に確実に留置針を入れ、輸液のラインを確保します。



せきねちゃんには十分に酸素を吸入してもらい(酸素化)、イソフルランによるガス麻酔を開始します。

患部をバリカンで剃毛します。



剃毛の仕上げは、カミソリで行います。





準備は完了です。



執刀します。



バイポーラ(電気メス)で確実に止血しながらメスを進めていきます。









何ヶ所か太い栄養血管も走行していましたので、バイクランプでシーリングしていきます。



胸筋にも腫瘍は浸潤していましたので、筋肉層も切除します。





大きな出血もなく、無事に腫瘍は摘出完了しました。

下写真は腫瘍浸潤のため、切除した筋肉の欠損部です。



欠損部を縫合します。



最後に皮膚縫合します。



たくさん縫合しなくてはなりませんでした。



麻酔中の問題も特になく、無事せきねちゃんは覚醒し始めています。



高齢であっても、しっかり手術に耐えてくれました!



手術翌日のせきねちゃんです。

足取りもしっかりしています。

右前肢の運行も問題ありません。



下写真は摘出した腫瘍です。





腫瘍の割面です。



病理標本の写真です。

下写真は低倍率です。

腫瘍性上皮細胞(癌細胞)の浸潤性増殖が広範囲に観察されます。



次に高倍率です。

一部の腫瘍性腺腔内に好酸性分泌部が検出され、浸潤性乳腺癌との病理医からの診断が出ました。

悪性度が高く、増殖性に浸潤傾向があるため今後の挙動には注意が必要とのことです。





術後経過は良好で、入院3日目に退院して頂くこととなりました。

退院時のせきねちゃんです。





その後、2週間が経過しました。

下写真は、抜糸のため来院されたせきねちゃんです。

腋下部を少し齧って、痂皮ができていますが患部の吻開もなく落ち着いています。



抜歯後のせきねちゃんです。



これまで私が外科手術したウサギの中で、せきねちゃんは一番の高齢者です。

腫瘍再発の可能性はまだあり、経過観察が必要です。

しかし、さらにウサギの長寿記録を目指して、さらに長生きして頂きたく思います。

せきねちゃん、お疲れ様でした!




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