こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、アイガモの代謝性骨疾患です。
代謝性骨疾患(Metabolic Bone Disease :MBD)については、過去に爬虫類の疾患の項目で度々ご紹介させて頂きました。
詳細は
こちらをご覧ください。
鳥でも爬虫類同様、この
MBDは認められます。
特に幼鳥期に栄養学的に不十分な給餌をされると発症することが多いです。
アイガモのアース君(雄、2か月齢)は突然、歩行できなくなったとのことで来院されました。
まだ2ケ月齢という幼鳥期なのですが、給餌している餌が油粕などの不適切なものでした。
羽の艶もなくバサバサしており、栄養状態は良好とはいえない状態です。
特に幼鳥期は、カルシウムやビタミンD3が不十分な餌を与えていると低カルシウム血症に陥りやすいです。
その結果、血中のカルシウム濃度を上昇させるために骨に貯蔵されてるカルシウムを血中に放出します。
骨の強度はカルシウムに負うところが大きく、支持体としての骨の強度は脆弱で脆くなっていきます。
当然、体重を支えることも辛くなり歩行が疼痛のため出来なくなります。
爬虫類であれば、ここで甲羅や顎が変形し始めます。
この一連の病態生理を背景に代謝性骨疾患は起こります。
体を支えても手を放すとすぐにしゃがんでしまいます。
アース君は若いだけあって元気は良いのですが、体のバランスを取って歩行することは全くできません。
四肢の骨の状態を念入りにチェックしましたが、幸いに骨折・脱臼は認められませんでした。
レントゲン撮影したいところなんですが、元気すぎて撮影のため暴れて骨折されては大変なのでやめました。
代謝性骨疾患(MBD)と診断し、食餌の内容を適切な飼料に変更しビタミンD3、カルシウム製剤をしばらく内服して頂くこととしました。
下写真は2週間後のアース君です。
しっかり、地に足をつけて立つことが出来るようになりました。
普通に歩行することも、水浴びすることもできます。
今回の症例で、体を作るべき幼鳥期の食餌はいかに重要か痛感させられました。
一般的には、このMBDはセキセイインコや文鳥で診ることが多いのですが、アイガモのように比較的大型の鳥類では遭遇する機会は少ないです。
アース君、立派なアイガモに成長して下さいね!
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