ウサギの尿石症(砂粒症)
2014-07-30 20:12
有限会社もねペットクリニック
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こんにちは 院長の伊藤です。

本日はウサギの泌尿器疾患の中でもとりわけ、発症率の高い尿石症(砂粒症)についてコメントさせて頂きます。

ウサギの生理学的特徴として、尿中のカルシウム排泄量が多い点が挙げられます。

犬や猫は尿中のカルシウム排泄率は、2%程度です。

しかし、ウサギは45〜60%とされます。

そのため多量に排出されたカルシウムが汚泥状になったり、あるいは結石を形成したりして排尿障害から腎不全・尿毒症に至り、死亡する場合があります。



ミニウサギのうーちゃん(5歳7か月、雌)は、他院で毛球症の疑いで治療を受けていましたが、改善なく当院を受診されました。

すでに四肢が踏ん張れるほどの力がなく、状態はよろしくありません。



排尿もここ数日、したところを見ていないとのことで、一度レントゲン撮影をしました。

下写真の黄色丸は腎臓で、草色丸は膀胱です。





上のレントゲン写真からわかるのは、腎結石が左腎に大きなものがあること、右腎臓が腫大していること、膀胱内に尿結石もしくは汚泥状砂粒が存在することです。

左腎は腎結石で機能不全に陥り、代償的に右腎が頑張って挙句に腎障害を起こし、左腎の倍くらいに腫大している可能性があります(下写真は拡大したものです)。



膀胱内に尿石等が溜まって排尿もできない状態かもしれません(下写真も同じく拡大したものです)。



腎不全のステージを知る上でも血液検査が必要なのですが、血圧も低くなり採血が十分にできない状態です。

特に尿石や砂粒が原因で尿道閉塞に至れば時間の問題で、迅速に外科的に摘出するか、解除しなくてはなりません。

幸い、うーちゃんは頭側皮静脈が留置針で確保できましたので点滴をして、ICUに入ってもらいましたが排尿の兆しは認められません。



飼い主様に相談して緊急の状況であることをご理解頂き、外科的に膀胱切開をすることとしました。

ガスマスクをして全身麻酔を施します。





開腹して、膀胱を確認しました。

この時点で膀胱内に塊が存在するのが触知されました。

ただ膀胱内は尿で膨満していることはなく、排尿が出来ていないのはおそらく腎不全の末期的ステージの乏尿期である可能性が伺われました。

採血できない状況でしたので、開腹しての確認となりましたが、麻酔がさらに腎不全を悪化する危険もありますので速やかに膀胱内の結石を摘出することとしました。





膀胱内から出てきたのは、結石かと思いきや汚泥状になった砂粒が硬化して硬めの粘土となったものです。

大きさは膀胱内に充満するほどに鎮座していました。





下写真は翌日の水分が飛んだあとの砂粒の汚泥化したものです。



膀胱内を生理食塩水で何度も洗浄します。



この時、膀胱内から出て来た砂粒物です。



これを後程、顕微鏡で確認した画像です。

下写真の黄色丸はシュウ酸カルシウムで、その周りの結晶は炭酸カルシウムです。



膀胱を細かく縫合します。





手術は無事終了し、術後の排尿も認められました。

術後のうーちゃんです。



術後のうーちゃんは動きも多少認められ、快方に向かっているかに見えましたが、残念ながら翌日に逝去されました。

非常に残念です。


恐らく左腎結石ができたのは、随分前であったかと思われます。

結石は次第に大きくなり、左腎臓の機能を奪った後、右腎がフル稼働で腎機能を担っていたことでしょう。

腎不全が進行する中、うーちゃんはホウレンソウなどの葉野菜を好んで食べていたそうです。

ウサギにとっては、カルシウム制限は必須です。

主食はカルシウム含量の少ないイネ科のチモシーを主体にし、補足的にペレットフードを給餌して下さい。

そして十分な水を飲ませるようにして下さい。

それだけでも、高カルシウム尿症(砂粒症)や尿石症は防ぐことが可能です。


また尿石症が水面下で進行している場合は、排尿量が低下したり、頻尿・血尿があったり、外陰部の尿やけがあったりしますので常日頃からウサギを観察して頂く習慣を持って下さい。





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