リスザルのターバンヘッド(骨格壊血症)
2014-07-26 16:30
有限会社もねペットクリニック
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こんにちは 院長の伊藤です。

当院は基本的に霊長類の診察は行っていません。

それは、当院がショッピングモール内にありますので、何かの折に病院から逃走してモール内で捕り物沙汰になりますと責任問題となるからです。

それでも、治療が必要で性格がおとなしく、飼主様が確実に保定できる場合に限ってのみ診察します。

そんな霊長類のサルの中でも、新世界サルに分類されるリスザルについてコメントさせて頂きます。



リスザルの福君(3歳、雄)は、頭が大きく変形してきたとのことで来院されました。



頭部を確認しますと皮下に液体が貯留しています。

下写真黄色丸の様に頭が変形しているかのように腫大しています。



側面です。



上から見ると、額から後頭部にかけて腫大しているのがお分かり頂けると思います。



なぜ福君はこのような容貌になってしまったのでしょう。

この症状はリスザルでは比較的遭遇することの多いターバンヘッドと呼ばれる症状です。

サル類は旧世界ザルと新世界ザルに分かれ、リスザルは新世界ザルに属します。

新世界ザルはビタミンとカルシウムの要求量が多く、バランスの悪い食生活を背景にしたビタミン欠乏症は多いです。

犬や猫などは自身でビタミンCを合成する能力があるのですが、モルモットやサル、ヒトは合成できない動物です。

したがって、食餌にビタミンCが必ず入っていなければなりません。


このターバンヘッドはビタミンC欠乏により引き起こされます。

ビタミンCは血管の構造・機能の保持や類骨形成に重要なコラーゲン合成に関与しています。

特にリスザルではビタミンC欠乏で骨膜出血が引き起こされ、血腫が形成されます。

血腫は時として巨大化し、あたかもターバンを頭部に巻きつけたよな外貌(ターバンヘッド)を呈します。



頭部の骨の状態を確認するため、レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色矢印は血腫で腫脹した頭部です。



下写真では一部骨膜が破たんして骨新生しています(黄色矢印)。



骨の表面を覆う骨膜は、骨折時に障害を受けてその部位の骨新生を促すといった機能を持ちます。

しかし、ターバンヘッドの場合は骨膜の血管が破たんして出血が起こり、血腫が形成されて、その圧迫で新たにあらぬ方向・部位に骨が形成されてしまいます。

結果として、頭部や顔面が変形していく場合がありますので、状況に応じて過剰に新生した骨組織を削って行ったり、整形処置が必要となるケースもあります。

頭部血腫が福君の場合、進行してましたので血腫対策として皮下から血液を吸引して抜くこととしました。











福君は性格が穏やかで興奮することなく、素直に処置を受け入れてくれました。

頭部血腫の吸引血液は25mlに及びました。

ただ体重が950gという軽量なので、これ以上吸引すると貧血をおこしたり、ショック状態に陥っては大変なので終了と終了としました。

下写真の血液吸引後の福君は、頭部がすっきりしたのがお分かり頂けると思います。

残念ながら、この3日後に頭部の血腫は同じくらいに貯留してしまいました。



治療法としては、アスコルビン酸(25mg/kg/day)を投薬します。

福君の場合、ショップにいる頃からドッグフードに多少の栄養分を添加したフードを与えられていたとのこと。

リスザルの場合は、30~60日間ビタミンC欠乏が続くとターバンヘッドが発症するとされています。

現在、福君はモンキーフードを給餌してもらい栄養学的な問題点は改善されました。

しばらくは、アスコルビン酸の投薬は続きます。

福君、しっかり治していきましょう。




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