エボシカメレオンのグロテスク・スマイル(妊娠含む)
2014-07-07 19:38
有限会社もねペットクリニック
記事に戻るコメント(0)を読む・書く

こんにちは 院長の伊藤です。


先月の当院のエキゾッチクアニマルの新患数が、犬猫の新患合計数の3倍に達している事実を知りびっくりしてます。

たくさんの動物病院のHPを拝見していますが、疾病紹介については犬猫よりエキゾッチクアニマルは、はるかに少数派であまり掲載されてません。

ついつい疾病の目新しさ・アピール度を考慮して当院ではエキゾチックアニマルの紹介が多くなってしまった傾向があると思います。

ある意味、これも自分の使命と思っていますので、今後もエキゾチックアニマルの疾病紹介は継続していきます。

勿論、エキゾッチクアニマル以上に犬猫は好きですから、犬猫編も力を入れて行きますのでよろしくお願い致します!



さて本日ご紹介させて頂きますのは、エボシカメレオンのグロテスク・スマイルです。

英語の直訳で醜い笑顔です。

以前にグリーンイグアナの代謝性骨疾患でグロテスク・スマイルについてコメントさせて頂きました。

その詳細に興味のある方は、こちらをクリックして下さい。


エボシカメレオンのねえさん(8か月齢、雌)はお腹が張ってきたとのことで来院されました。





腹部が大きく腫大しています。

妊娠の可能性もありますのでレントゲン撮影を実施しました。

ねえさんの実寸大は下のレントゲン写真の通りです。

10数センチの体です。



拡大像です。

黄色丸の部分が卵管で卵がたくさん詰まっています。







エボシカメレオンは、約1か月の妊娠期間を経て床面に産卵床を掘り、20〜40個の卵を産卵します。

ねえさんはそろそろ産卵の時期に達しているようです。

無事産卵が出来るように産卵床を含めた環境整備が重要となります。


加えて、ねえさんを診て気になるのは、顎の変形です。

下写真黄色丸の部分、特に下顎が変形しているのがお分かりいただけると思います。

ねえさんは口をしっかり閉じることが出来ません。





恐らくねえさんは、代謝性骨疾患(MBD)に罹患して顎が変形したものと思われます。

MBDによるこの顎の変形を称してグロテスク・スマイルと言います。

幼体期の餌のバランスは非常に重要です。

特にビタミンDとカルシウム、そして十分な紫外線量が取れていないと代謝性骨疾患(MBD)になります。

特に幼体期は十分な骨格を形成するためカルシウムを大量に必要とします。

MBDになりますと、背骨・尻尾・手足の変形や顎の変形が起こります。


MBDは自然界には存在しない疾病です。

グリーンイグアナのMBDの症例報告でも申し上げたのですが、MBDは100%人為的な原因(食餌・温度管理・紫外線照射量)
で発症します。





MBDの治療法は十分な紫外線量です。

そのため爬虫類用の紫外線ランプを使用して下さい。

そして十分なカルシウムを含む野菜(青梗菜、コマツナ等)、さらにビタミンDを与えて下さい。

残念ながら、幼体期のMBDによる骨変形に関わる症状・病態は回復させることは困難とされます。

加えて、ねえさんの場合は妊娠中ということで、カルシウムが不足の状態になりますと卵つまりになる可能性もあります。

卵の卵殻形成にカルシウムが消費され、さらにMBDの個体はただでさえ血中カルシウム濃度が低いため、卵殻は非常に軟弱となり卵管をスムーズに降りることが出来なくなります。

結果として卵つまりとなった場合、開腹手術をして卵管切開して卵を摘出する必要が生じます。

最悪そのような状況にならないよう祈念したいところです。







その後、ねえさんは無事産卵できたとの報告をいただきました。

爬虫類の疾病は、その多くが食餌や飼育環境が原因で起こるケースが非常に多いです。

特に幼体を飼育される場合、この2点は気を付けて頂きたいと思います。



にほんブログ村ランキングにエントリーしています。



宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
記事に戻るコメント(0)を読む・書く
検索
キーワード

カテゴリ
イグアナ・トカゲの疾病 (27)
ウ―パールーパー・カエルの疾病 (26)
ウサギの疾病 (68)
カテゴリを追加 (2)
カメレオンの疾病 (21)
スタッフからのおしらせ (176)
スタッフブログ (792)
チンチラの疾病 (6)
ハムスターの疾病 (32)
ハリネズミの疾病 (12)
フェレットの疾病 (22)
フクロモモンガの疾病 (22)
プレーリードッグ・ジリスの疾病 (9)
ヘビの疾病 (10)
モルモットの疾病 (20)
リクガメの疾病 (5)
水槽カメの疾病 (9)
泌尿器の疾患うさぎ (1)
犬の疾病 (98)
猫の疾病 (26)
院長ブログ (55)
鳥の疾病 (39)
月別アーカイブ
2016年12月 (3)
2016年11月 (9)
2016年10月 (8)
2016年9月 (19)
2016年8月 (13)
2016年7月 (14)
2016年6月 (15)
2016年5月 (14)
2016年4月 (10)
2016年3月 (18)
2016年2月 (13)
2016年1月 (13)
2015年12月 (30)
2015年11月 (16)
2015年10月 (18)
2015年9月 (19)
2015年8月 (19)
2015年7月 (21)
2015年6月 (18)
2015年5月 (13)
2015年4月 (13)
2015年3月 (14)
2015年2月 (19)
2015年1月 (32)
2014年12月 (33)
2014年11月 (23)
2014年10月 (29)
2014年9月 (33)
2014年8月 (28)
2014年7月 (32)
2014年6月 (34)
2014年5月 (28)
2014年4月 (36)
2014年3月 (17)
2014年2月 (30)
2014年1月 (37)
2013年12月 (35)
2013年11月 (45)
2013年10月 (54)
2013年9月 (40)
2013年8月 (22)
2013年7月 (28)
2013年6月 (29)
2013年5月 (25)
2013年4月 (43)
2013年3月 (24)
2013年2月 (19)
2013年1月 (21)
2012年12月 (17)
2012年11月 (15)
2012年10月 (20)
2012年9月 (26)
2012年8月 (25)
2012年7月 (24)
2012年6月 (25)
2012年5月 (26)
2012年4月 (44)
2012年3月 (25)
2012年2月 (17)
2012年1月 (16)
2011年12月 (10)
2011年11月 (15)
2011年10月 (13)
2011年9月 (18)
2011年8月 (15)
2011年7月 (20)
2011年6月 (1)
2011年5月 (1)
2011年3月 (1)

友人に教える

ホーム
上へ
有限会社もねペットクリニック

もねペットクリニック
このサイトは携帯電話向けサイトです。
携帯電話でご覧ください。