フクロモモンガのストルバイト尿石症
2014-06-20 18:42
有限会社もねペットクリニック
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こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介するのはフクロモモンガのストルバイト尿石症です。

フクロモモンガの尿の性状については、健常時は酸性尿なのかアルカリ尿なのかも調べられていないように思います。

手元の資料・文献のも記載がありません。

以前、ハムスターの尿石症(ストルバイト尿石)で治療の難しさをコメントさせて頂きました。

興味のある方はこちらをクリックして下さい。

ハムスター以上にフクロモモンガはその詳細は不明な点が多いとされます。



フクロモモンガのシモンちゃん(7歳4か月齢、雌)は、何年か前から尿石(ストルバイト)があるということを他院の獣医師から指摘されており、また定期的に尿検査を受けていたそうです。



ただシモンちゃんは排尿障害とか血尿とかは全くありません。

そこで当院に転院されてから、定期的な尿検査を実施させて頂いてます。

その中で、たまたまストルバイト尿石を検出する機会がありました(毎回、ストルバイトが出るわけではありません)ので、紹介させて頂きます。

下写真はシモンちゃんの尿を顕微鏡で確認した像です。

低倍率像です。



高倍率像です。



明らかにストルバイト結晶(リン酸アンモニウムマグネシウム)です。

量的にもそこそこの尿石が存在していると思われました。

これまでにもたくさんのフクロモモンガの診察をさせていただきましたが、ストルバイト結晶を認めたのはシモンちゃんだけです。


犬猫の尿phは基本酸性尿です。

そして、犬猫のストルバイト尿石症の原因は、尿中のリン酸アンモニウムマグネシウムが過飽和状態であること。

そのための条件として、感染性スツルバイトの場合は尿路感染、ウレアーゼ酸性菌、アルカリ尿、遺伝的体質、食物が関連しています。

無菌性スツルバイトの場合は、食物性あるいは代謝性の因子が無菌性スツルバイト尿石形成に関連しているとされます。


ハムスターの場合もストルバイト尿石の形成要因が不明ですが、フクロモモンガはさらに分かりません。

恐らくは、犬猫に準じた要因で生じるものではないでしょうか。


シモンちゃんはフクロモモンガの雌の平均体重が95〜135gのところ、260gという立派な体格をされています。









フクロモモンガは雑食性で、食餌の嗜好性が強く、バランスの取れた食餌を維持するのが困難とされます。

甘いものが好きな個体が多く、昆虫ゼリーや果実系を好む傾向があります。

多くの果実はタンパク質やカルシウムが足りません。

シモンちゃんはフクロモモンガ用ペレットを中心に昆虫やゼリーを与えているようです。

偏った食生活が尿石の原因ではないようですが、詳細はわかりません。

シモンちゃんのこれまでの尿phは7〜9というアルカリ尿で安定しています。

そうなるとフクロモモンガの尿phは、ハムスターのアルカリ尿と同じなのかもしれません。

今回、このストルバイトの治療としてヒルズのS/dという療法食を試験的に食べてもらうこととしました。

4日後に尿検査をしましたが、ストルバイトは陰性でした。

フクロモモンガはアルカリ尿だとすれば、今後ストルバイト尿石は生じると思われます。

シモンちゃんは今のところ、尿路疾患は認められていません。

不明点は多いのですが、フクロモモンガの尿石症について今後、調査していきたいと思います。




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