トイプードルのレッグ・ペルテス病
2014-04-01 12:09
有限会社もねペットクリニック
記事に戻るコメント(0)を読む・書く

春を迎えるにあたり、春の健康診断や狂犬病ワクチン予防接種、フィラリア予防など準備に忙殺されてブログ更新が滞り、読者の皆様ご迷惑おかけいたしました。

頑張って記事を載せていきますので宜しくお願い致します。



さて、本日ご紹介しますのはレッグ・ペルテスという疾患です。

この病気の特徴は、大腿骨の骨頭への血行が阻害されて、骨頭が壊死を起こしてしまうところにあります。

原因は今のところ不明ですが、遺伝が関係しているとの報告があります。


トイプードルのアロハちゃん(11か月、雌、体重1.6?)は何か月も前から左の後足を引きずる、びっこを引くとのことで来院されま
した。




歩行を見ますと、左後足の動きがぎこちなく、足を浮かせて歩くような感じです(下写真黄色丸)。



そこでレントゲンを撮ってみました。

下のレントゲン写真をよくご覧いただきますと、大腿骨頭の形状が右と左で異なってるのがお分かり頂けると思います。



さらに拡大します。



本来、きれいな球面体をしている骨頭が扁平形を呈しています。

加えて、虫食いの様に骨頭の一部が黒い影を呈しています。

下は側面のレントゲン像です。

骨頭の表面が凸凹しているのが分かります。



この時点でアロハちゃんはレッグ・ペルテスに罹患しているのが強く疑われます。


レッグ・ペルテス病は別名、大腿骨頭壊死症とも言います。

特にトイ種の4か月から1歳位までに発症するケースが多いとされます。

大腿骨頭への血液供給が障害されて、大腿骨頭の成長障害が生じ、骨の変形崩壊が起こります。

大腿骨頭はいずれ骨折し、股関節の疼痛・硬直が永続的に続くこととなります。


レッグ・ペルテスの治療ですが、症状が軽度なステージでは抗炎症剤による内科的治療と運動制限で対応します。

しかしながら、ほとんどの症例で症状はさらに進行しますので、最終的には外科手術が必要となります。

以前に大腿骨頭切除手術についてコメントさせて頂きましたが、まさにその手術の適応となります。

大腿骨頭を切除しても、残った大腿骨と臀部筋肉で結合組織からなる偽関節を形成して、正常な運動が可能となります。

飼い主様のご了解のもと、大腿骨頭切除手術を行うこととなりました。


体重がわずか1.6kgのアロハちゃんですが、臀部の筋肉群をなるべく温存させる形で筋肉の離断は最小限にとどめて切開を進めていきます。




関節包を切開して大腿骨頭を露出し、股関節から脱臼させます。



脱臼させた大腿骨頭は表面が凸凹でひび割れたような構造(下黄色矢印)をしています。



次に骨頭を振動鋸で切除します。









下写真は離断した骨頭です。

骨頭は既に変形しており、表面はひび割れています。



術後に早く歩行できるためにも、臀部の筋肉のダメージを最小限に抑えて、切開した筋肉は確実に縫合して復元します。








大腿骨頭切除した後のレントゲン像です。



下は切除した骨頭です。

骨頭は表面はひび割れており、骨頭が変形しています(黄色矢印)。



術後のアロハちゃんですが、経過は良好です。

下写真は術後4日目のアロハちゃんです。



まだぎこちなさはありますが、普通に歩行できています。





レッグ・ペルテス病はその進行ステージによって、タイミングの良い時期に外科手術を受けることで患肢は大幅に改善します。

しかし、ステージが進行して高度に筋肉萎縮したケースでは、術後の機能回復が認められない場合があります。

成長期の仔犬で歩行異常が認められたら、継続的に繰り返しレントゲン撮影を受けると良いでしょう。

しばらくはリハビリの日々が続きますが、アロハちゃん頑張っていきましょう!







にほんブログ村ランキングにエントリーしています。



宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります!
記事に戻るコメント(0)を読む・書く
検索
キーワード

カテゴリ
イグアナ・トカゲの疾病 (27)
ウ―パールーパー・カエルの疾病 (26)
ウサギの疾病 (68)
カテゴリを追加 (2)
カメレオンの疾病 (21)
スタッフからのおしらせ (176)
スタッフブログ (792)
チンチラの疾病 (6)
ハムスターの疾病 (32)
ハリネズミの疾病 (12)
フェレットの疾病 (22)
フクロモモンガの疾病 (22)
プレーリードッグ・ジリスの疾病 (9)
ヘビの疾病 (10)
モルモットの疾病 (20)
リクガメの疾病 (5)
水槽カメの疾病 (9)
泌尿器の疾患うさぎ (1)
犬の疾病 (98)
猫の疾病 (26)
院長ブログ (55)
鳥の疾病 (39)
月別アーカイブ
2016年12月 (3)
2016年11月 (9)
2016年10月 (8)
2016年9月 (19)
2016年8月 (13)
2016年7月 (14)
2016年6月 (15)
2016年5月 (14)
2016年4月 (10)
2016年3月 (18)
2016年2月 (13)
2016年1月 (13)
2015年12月 (30)
2015年11月 (16)
2015年10月 (18)
2015年9月 (19)
2015年8月 (19)
2015年7月 (21)
2015年6月 (18)
2015年5月 (13)
2015年4月 (13)
2015年3月 (14)
2015年2月 (19)
2015年1月 (32)
2014年12月 (33)
2014年11月 (23)
2014年10月 (29)
2014年9月 (33)
2014年8月 (28)
2014年7月 (32)
2014年6月 (34)
2014年5月 (28)
2014年4月 (36)
2014年3月 (17)
2014年2月 (30)
2014年1月 (37)
2013年12月 (35)
2013年11月 (45)
2013年10月 (54)
2013年9月 (40)
2013年8月 (22)
2013年7月 (28)
2013年6月 (29)
2013年5月 (25)
2013年4月 (43)
2013年3月 (24)
2013年2月 (19)
2013年1月 (21)
2012年12月 (17)
2012年11月 (15)
2012年10月 (20)
2012年9月 (26)
2012年8月 (25)
2012年7月 (24)
2012年6月 (25)
2012年5月 (26)
2012年4月 (44)
2012年3月 (25)
2012年2月 (17)
2012年1月 (16)
2011年12月 (10)
2011年11月 (15)
2011年10月 (13)
2011年9月 (18)
2011年8月 (15)
2011年7月 (20)
2011年6月 (1)
2011年5月 (1)
2011年3月 (1)

友人に教える

ホーム
上へ
有限会社もねペットクリニック

もねペットクリニック
このサイトは携帯電話向けサイトです。
携帯電話でご覧ください。