眼球突出、これは文字通り何らかの衝撃が頭部に加わり、その結果眼球が飛び出てしまう現象です。
この眼球突出が起こりやすい犬種に短頭犬種(フレンチブルドック、パグ、ペキニーズ、シーズーなど)が挙げられます。
短頭犬種は眼球の受皿である眼窩が非常に浅いため、眼球突出が容易に起こってしまいます。
今回ご紹介するフレンチブルドッグのフレンチ君は、飼主様がその現場に居合わせていなかったため詳細は不明ですが、階段から落ち頭部を強打した模様です。
顔面を見た所、眼球が飛び出しており緊急で来院されました。
ショッキングな画像になると思われますので、興味のある方に限ってこちらをクリックして下さい。
眼球を眼窩に固定する外眼筋と言う筋肉があります。
この筋肉が断裂しますと眼球を固定することができなくなります。
数本の外眼筋の断裂であれば、眼球が斜めに向く斜視となりますし、外眼筋がすべて断裂してしまうと眼球は眼窩から垂れ下がってしまいます。
こうなると眼球摘出しか方法はありません。
今回のフレンチ君は外眼筋の過半数が断裂している可能性があります。
また瞳孔のサイズが本来外傷により、虹彩は縮小してるのが普通であり、瞳孔が小さくなっていれば経過は良好と思われます。
しかし、重度の障害が動眼神経や網様体神経節に及ぶと瞳孔は逆に散瞳と言って大きく広がります。
写真をご覧いただいて分かるようにフレンチ君は散瞳状態にあります。
加えてフレンチ君は、光に対する瞳孔反射もなく、この状態が1週間以上続くようなら視力は戻ることはありません。
いずれにせよ、非常に緊急の状態ですから、突出した眼球の整復を実施することとしました。
全身麻酔を施します。
眼球に眼軟膏を十分塗布して、メスの柄を利用して眼球を優しく眼窩に押し戻していきます。
次いで瞼を縫合します。
フレンチ君はこの後抗生物質を1週間内服していただき、数週間後に瞼の抜糸を行います。
その時点で整復もうまく完了していれば良いのですが。
重度の角膜障害があれば2か月位治療に要するでしょう。
審美的な観点から、眼球摘出はできるだけ避けたいです。
今回の症例は眼球以外の部位については、特に異常はありませんでした。
抜糸後眼球が良い状態であることを祈ります。
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