今回はウサギの膿瘍、特に歯にまつわる膿瘍(歯周病起因のタイプ)をご紹介します。
ウサギの切歯・臼歯の過長症で説明したように、彼らの常生歯という特徴から咬み合わせの悪さから歯根部に細菌感染が及んで上顎や下顎が腫れあがるほどの膿瘍ができます。
ウサギの場合、犬猫の膿瘍と異なるのはチーズ様の粘性の高い膿の発生により完全排出が困難であることです。
加えて顎骨の変形・融解を伴うため完治させることが不可能です。
そのために飼い主様への患部処置法や食事管理等の指導がかかせません。
根本的治療は原因となる患歯の抜歯となります。
ウサギは犬猫に比べ骨密度が半分以下であり、膿瘍による顎骨の変形・融解が生じてい舞うので重度の膿瘍でない限りは当院では抜歯は行っていません。
したがって、治療の中心は膿瘍の治療となります。
患部の場所、膿瘍の程度、顎部の変形・融解などに応じた個々の処置法を当院では実施しています。
下の写真は膿瘍が下顎に出来たウサギです。
下の写真は別のウサギです。下顎を切開して排膿して洗浄液で洗っているところです。
さらに別件のウサギですが、皮下膿瘍を切開して患部を開放創にしてこの創内に洗浄・消毒管理を実施している写真です。
術後、最低でも数週間の抗生剤の投与が必要です。
次は下顎の膿瘍が破裂してしまったウサギです。
破裂した嚢包を縫合して、排膿のためにドレインチューブを留置しました。
ドレインチューブ内に洗浄消毒液・ニューキノロン系の抗生剤・アイプクリーム等を投与して治療を行いました。
これらの治療で二週間後には一旦、完治したかにみえましたが、数カ月後に同じ場所に膿瘍が再発しました。
何度も繰り返して申し上げますが、このウサギの歯科疾患由来の皮下膿瘍は完治させることが非常に難しいです。
各種治療法は提案されていますが、確立した治療法はありません。
我々としては、ウサギの歯のメンテナンスの必要性(歯科検診)や正しいウサギの食餌の重要性、歯にまつわる正しい知識を飼い主様に伝える努力をしていきたいと思っています。