リチャードソンジリスを初めとして、オグロプレーリードッグもそうですが、顔面から口腔内の腫瘍の発生率が高いです。
今回、ご紹介しますのはリチャードソンジリスのジル君(雄、3歳)です。
左の口吻部に腫瘤ができて、大きくなっているとのことで来院されました。
体のサイズに比べても大きな腫瘤です。
食餌を取るにもストレスになるだろうと思われます。
まずは細胞診を実施することとしました。
その結果が下写真になります。
結果は扁平上皮癌という結果で、外科的に腫瘍を切除することとなりました。
扁平上皮癌は口の中の粘膜・膀胱の粘膜・副鼻腔・気管支などに発生する悪性の腫瘍です。
患部は潰瘍・びらんという症状で出現することが多いとされます。
最初にガスマスクをかませて、イソフルランを流入させガス麻酔をします。
ふらふらとしたところで、自家製のマスクで維持麻酔をします。
できるだけ腫瘍のマージン(辺縁)を切除します。
しかし、場所が頬になりますので頬袋ごと全摘出は難しいと思われます。
電気メスで切除していきます。
摘出した腫瘍です。
出来る限りのマージンを取って摘出しました。
術後1週間のジル君です。
傷口の経過は良好です。
この口吻部腫瘍の件は、これで落ち着いたのですが、この3か月後に右口腔内に腫瘤が出来、膿瘍も併発してしまいました。
この腫瘤を再度、細胞診したところ、やはり扁平上皮癌とのことでした。
今度の患部の所在が、頬の内側とのことで外科的手術は困難です。
扁平上皮癌に効果があるとされている非ステロイド系COX−2阻害薬のピロキシカムの内服を実施することとしました。
しかしながら、扁平上皮癌の進行が非常に早く、食欲は全く無くなり、飼主様には流動食で対応して頂きました。
それでもピロキシカム内服を始めて、わずか4日目にしてジル君は急逝されました。
非常に残念です。
ジリスにしてもプレーリーにしても扁平上皮癌は進行・転移が非常に早く感じます。
この扁平上皮癌を発症した場合、その後の展開は厳しいものと思います。
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