フクロモモンガはストレスに対して敏感に反応します。
ストレスとは飼育環境(温度・湿度、ケージの大きさ、餌の内容、他のモモンガとの干渉等)によって、心身に及ぼす負担を今回は指していいます。
ストレスの発散を、イヌのようにカーテンを咬み破ったり、靴を破壊したりといった外的破壊行為にモモンガは走りません。
自分の体を咬んだり、爪で傷つけたりする、いわゆる自傷行為をします。
以前、
フクロモモンガの咬症でこの自傷行為の一例を紹介しました。
今回、ご紹介しますのは
ぷうちゃん(♀、6か月齢)です。
耳を気にして肢で引掻くとのことで受診されました。
よくよく拝見しますと既に左の耳がかさぶたに覆われており、耳の中を覗こうとしたところ、耳の付け根(下写真黄色矢印)から耳が取れてしまいました。
取れてしまった耳介部です。
恐らく何日も前から耳を掻破して細菌感染を起こし、結果として耳介部が壊死を起こしたものと思います。
なぜ耳介部を引掻き始めたのかは、本人にしかわかりません。
特に外耳炎を起こしているわけでもありません。
フクロモモンガに限らず、エキゾチックアニマルは気に入らないと徹底して自分の体を傷つける傾向があります。
ぷうちゃんの場合、取れてしまった耳介部の付け根、ひいては外耳道を保護するためにも、エリザベスカラーを装着しました。
二次的な自傷行為を防ぐためにも必要な措置です。
その約3週間後、ぷうちゃんが受診されました。
先回の左耳同様に右耳がかさぶたが出来て壊死を起こしているようだとのこと。
上写真黄色丸の右耳介部が出血を起こしており、恐らく爪で掻破したであろうと予測されます。
付け根の部分を診てみますと、下写真のようにすでに耳根部は壊死して外耳道が露出しています。
左耳が綺麗に治癒した段階で、エリザベスカラーを外したら反対側を自傷した模様です。
壊死して落ちた耳介部です。
結局、左耳介部の時と同様にエリザベスカラーの登場です。
残念ながら、ぷうちゃんの場合は両耳が無くなってしまいましたので見た目の印象も変わります。
早くぷうちゃん、良くなって下さいね!
これまでフクロモモンガの自傷行為をたくさん治療して参りました。
結果、どの箇所を気にして攻撃するだろうなという予測が、少しできるようになってきました。
今回の様に耳介部を自傷して、患部が治癒すれば、気も休まるだろうと思うのは早計です。
本人からすれば、もう片側残っているから自傷の対象にしてしまう場合もありということです。
エリザベスカラーにしてもストレスの原因です。
カラーを外して無防備になったところで、そのストレス解放の対象を健全な自分の体に向けてしまうこともあります。
ガチガチにカラーで防御したからといっても、それで自傷行為は終結したわけではありません。
その点がフクロモモンガの難しい点です。
要はストレスのない飼育環境を目指す方が手っ取り早いと思います。
スキンシップを好む動物なので、単独飼育の場合はまめに遊ぶ時間を作るとか、伴侶を新たに飼育するとかの方法も一つです。
飼育ケージが狭く高さもないようなら、もう一回り大きなケージを用意するというのもありです。
個体ごとのキャラクターも絡んできますので、それを読み取る飼主様の努力も必要でしょう。
外傷に対しては、自滅型のケースが多いのがフクロモモンガの弱点で、今後広くこの自傷行為のケース事例を載せていきたいと考えています。
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