今年の暑さは酷いですね。
メディアは、熱中症について毎日しつこく報道していますので、幸いなことに当院では熱中症の患者は少ないです。
犬猫のみならず、飼育環境の温度・湿度管理で爬虫類や両生類の飼主様方も苦労されています。
本日は、両生類では非常に人気の高いウーパールーパーの薬物中毒の話です。
ウーパールーパーのしろちゃんは、皮膚病のため飼主様が自己責任で薬浴をされました。
しろちゃんを購入されたペットショップのスタッフから、メチレンブルーの薬浴を進められて1晩以上薬浴をしていたところ、体のバランスを崩してローリングをするようになり、心配になっての来院です。
じっと一か所に居るのが辛そうに絶えず動き回っている状態です。
どちらかというと苦悶しているかのように見えます。
顔を診ますとメチレンブルーの青色が残っています。
ウーパールーパーは薬剤の反応が、魚類に比べるとデリケートで慎重に薬浴はすべきだと私は思っています。
今回はメチレンブルーの薬量も多く、長時間の浸漬であったことを考慮しますと、メチレンブルーの中毒の可能性が高いと思います。
血液検査ができない生物なので、残念ながら客観的な医学的データ―を明示できないのが残念です。
入院していただき様子を診ていますと次第に下顎が腫れはじめ、開口し始めました。
この時、すでにしろちゃんは動くこともなく動きが停止しています。
ひょっとしたら死亡しているかもと思い、触れると動きます。
しかし、鰓の色も白くあせ始めてきました。
さらに体全体がむくみ(浮腫)始めました。
両生類は、浸透圧の関係で絶えず水分子が体内に入り込んできますので、この水を体外に排出するために腎臓が活躍します。
このとき腎臓が薬物で傷害を受けますと、体内に入ってくる水分が原因で体液の異常分泌が起きます。
体全体が浮腫を起こして腫れあがったり、下顎に体液が貯留して口が閉じなくなります。
今のしろちゃんが、まさにこの状態で、開口状態が続きました。
両生類に対応した生理食塩水の濃度は
0.65%とされています。
理論上はこの0.65%生理食塩水中にウーパールーパーを入れておけば、水槽内の水とウーパールーパーの体内との浸透圧差はゼロとなります。
結果、浮腫を防ぐことは可能となります。
哺乳類用の生理食塩水0.9%を希釈して0.6%の生理食塩水中にしろちゃんを浸漬しても特に容態は改善しません。
浸透圧調整以前にすでに腎機能が、メチレンブルーにより壊滅的な障害を受けていたと思われます。
こうなると両生類の治療は、厳しくなります。
残念ながら、翌日しろちゃんは亡くなられました。
両生類の治療の限界を感じる症例でした。
ウーパ―ルーパーの薬浴は基本短時間で薬用量も魚類の濃度3分の1位から初めて、少しづつ濃度を上げていくべきと思います。
薬は使用法を間違えると命に係わりますので、少しでも不明な点があったり、不安があれば両生類に詳しい獣医師にお尋ね頂くようお願い致します。
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