肛門嚢については、以前犬の疾病の項で
犬の肛門嚢摘出手術のテーマでご紹介しました。
肛門嚢の詳細は、そちらを参考にして下さい。
当院でも、定期的に肛門嚢を絞らせて頂いている犬猫は多いです。
肛門嚢が、分泌液で充満すると痒みも伴い、舐めたり床面に肛門部をこすり付けたりします。
案外、この動作で肛門嚢周辺の皮膚が裂けてしまうこともあるんです。
見るからに痛々しい症例ですが、ご紹介します。
猫のクッキーちゃんは、お尻周りから膿が出るとのことで来院されました。
痛そうな、怒ったような表情ですね。
お尻周りを拝見しますと
黄色矢印は肛門嚢の排出口から膿が出ています。
右側の黄色丸は皮膚が裂けて肛門嚢が露出しています。
肛門嚢炎と舐めすぎによる皮膚欠損・肛門嚢自壊です。
排膿が酷いので、消毒を兼ねて患部を洗浄しました。
いつもは患部洗浄と抗生剤の投薬で治るケースが多いです。
しかし、クッキーちゃんは気質がデリケートで患部を舐めずにはいられないタイプでした。
数日後に来院された時には、さらに皮膚の裂け目は拡大していました。
上写真の様に黄色丸の部分が大きく裂けた皮膚で内部が露出しています。
黄色矢印は途中で断裂した肛門嚢の排出口です。
このままでは完治は望めませんので、肛門嚢を摘出して皮膚を綺麗に縫合することとなりました。
この姿勢で手術に臨みます。
斜め横から見たアングルだと皮膚欠損が大きいのがお分かり頂けると思います。
肛門嚢を他の組織と識別するために、以前ご紹介したアナルサック・ゲルキットの高分子ゴム(黄色矢印)を肛門嚢の排出口から注入します。
肛門嚢が高分子ゴムの緑色で盛り上がっていきます。
肛門嚢を電気メスを用いて少しずつ分離していきます。
摘出した肛門嚢です。
さらに肛門周囲の皮下組織を綺麗に縫合して患部にテンションの掛からないようにします。
これにて手術終了です。
肛門は毎日使用するものですが、その近隣の肛門嚢が自壊したりすると、排便自体が疼痛で出来なくなります。
特に猫の場合は肛門嚢が溜まってくると、その体の柔軟性から簡単に肛門嚢を舐め、自壊に至ります。
常日頃から、肛門絞りはメンテナンスとして行われるのが良いと思います。
クッキーちゃん、お疲れ様でした。
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