本日ご紹介しますのは、カメのペニス脱です。
以前、当院ホームページに
ウスタレカメレオンのヘミペニス脱を載せたことがあります。
哺乳類のペニスは排尿用と生殖用の2種類の用途で機能します。
一方、爬虫類のペニスは生殖用のためだけに存在します。
このペニスをヘミペニスと呼称しています。
ゼニガメのジュニア君は突然、このペニスが脱出して戻らなくなり、元気食欲の喪失で来院されました。
ニホンイシガメとクサガメの幼体は、総称してゼニガメと呼ばれています。
どちらかというと慣用的な呼称と言えるかもしれません。
現在、ペットショップで販売されているゼニガメの殆どがクサガメの幼体だそうです。
ジュニア君はクサガメの幼体です。
下写真の黄色丸の中に認められる物体がペニスです。
黒いお餅のようですがこの裏側に2つに分かれたペニスが認められます。
それが下写真になります。
黄色矢印で示した部分がペニスでその中心部(赤矢印)に溝があり、そこから精液を放出します。
脱出したペニスが長時間経過している場合は、もとに戻すことはかなり難しいと言えます。
カメを初めとして、爬虫類は総排泄腔と呼ばれるおしりの穴が一つしかありません。
この総排泄腔から便、尿、卵が出てきます。
体内の直腸・尿管・卵管などは最終的な出口である総排泄腔の手前で合流するように出来ています。
綿棒を用いて、ペニスを総排泄腔である矢印方向へ優しく戻していきます。
爬虫類のペニス脱はかなり難しいケースが多く、哺乳類のそれと比較して苦労します。
今回は、何とか無事ペニスを戻すことが出来ました(黄色丸)。
腹圧をかけて排便をすると、再脱出のおそれもあると考えて
鳥の卵管脱の処置と同じ処置を実施することにしました。
つまり総排泄腔の端寄りに縫合糸を1針かけて、ペニスの脱出を防ぎます。
写真がピンボケで申し訳ありませんが、総排泄腔の端を少し縫合して絞ることで脱出を防ぎます。
数日経過を見て、この縫合糸はカットして再脱出が認められなければ治療は終了です。
カメのペニス脱が起こる原因ですが、まず一番多いのが発情が必要以上に続いてなるケース(持続発情)です。
他には、飼育環境が不完全であったり、食餌の栄養バランスが偏ったり等の条件が重なって起こります。
ジュニア君の場合、持続発情プラス脱出したペニスが、水槽内のフィルター濾過機の取水口に長時間吸い込まれていたことが原因のようです。
いずれにせよ、以上のような処置を実施してもペニスの整復が不可能な場合、ペニスを離断することとなります。
これは、先に挙げた
ウスタレカメレオンのヘミペニス脱に載せたとおりです。
カメを飼育されている飼主様、ペニス脱が認められましたら速やかに病院にお連れ下さいね!
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