年始早々の症例報告です。
今年の干支にちなんで、ボールパイソンの症例です。
呼吸する時に鳴き声が聞こえるとのことで来院されました。
果たして,ヘビは鳴くのか?
声帯を振動させて音を発することを鳴くとするならば、声帯を持たないヘビは解剖学的に鳴くことはできません。
一方、気管と呼気(吐く息)を使って音を出すことは可能です。
特に咽頭部から気管にかけて炎症があった場合、炎症によって気道壁が狭くなり、そこに呼気が通過する時に異音が生じて、あたかも鳴いているように感じることがあります。
一般にはヘビは鼻で呼吸しますので、開口呼吸するということは、まずは鼻炎が存在しており肺炎・気嚢炎に及んでいる可能性もあるということです。
このボールパイソン君の呼吸状態をみる限りでは、鼻炎や開口呼吸に及ぶほどの症状はありません。
開口させて口腔内を確認しました。
口腔内の炎症はありません。
爬虫類は、飼主様の申告する症状を診察台の上で再現してくれることは、まずありません。
軽症例であればなおさらです。
加えてボールパイソンはデリケートな気質で有名なヘビです。
なるべく本人のストレスにならないように、優しく診察を進めます。
肺を一つ取ってみても、ヘビの肺は全長の3分の2を占めると言われます。
その肺の後方に気嚢が存在しています。
変温動物であるヘビは飼育環境温度の急激な低下や低温下の飼育・飢餓が原因となって、呼吸器疾患に罹患することが多いです。
今回はレントゲン撮影ができませんでしたが、気道炎の可能性が高いと診断して、抗生剤・ビタミン剤の投薬を処方させて頂きました。
寒い時期は特に飼育環境の温度管理にご注意いただき、体温の大幅な変動をさけるようにして下さい。
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