ハムスターの眼球を受け止めている眼窩は非常に浅いため、ちょっとした衝撃で眼球は眼窩からはずれて突出してしまう事があります。
この症状を眼球突出と言います。
日常診療で遭遇する機会の多い眼疾患のひとつです。
すぐに眼球突出に飼主様が気づかれた場合、眼窩に戻して整復することも可能です。
しかし、気づかれずに時間が経過した場合、ハムスターが突出した眼球を引掻いたり、床材との摩擦で眼球は外傷を受けます。
加えて、眼球は乾燥して失明してしまう事もあります。
本日ご紹介しますのは、ジャンガリアンハムスターのピッキーちゃんです。
飼い主様が気づかれた時には、ピッキーちゃんの左眼球は突出して角膜は乾燥し、損傷を受けていました(下写真の黄色丸)。
残念ながら、すでにピッキーちゃんの視力はなく、無理に眼球を元に戻そうとすると眼球内からの出血を引き起こしてしまいます。
結果として、眼球摘出の手術を実施することとなりました。
ハムスターとは言え、眼球摘出は瞬間的に出血量が多いので慎重に対応します。
まずは全身麻酔です。
イソフルランでしっかり寝ていただきます。
すでに失明している眼球を5‐0の縫合糸で牽引して、眼球と眼窩部との靭帯、動静脈をバイポーラで凝固・切断します。
眼球を摘出した後は、瞼を縫合して終了です。
無事手術も終了して、3か月後のピッキーちゃんです。
瞼は上下とも癒合して、以前は存在していた左眼の位置もわからないくらい体毛が生えそろっています。
ピッキーちゃんは、眼球摘出後の日常生活は特に何の不自由もなく送れているそうです。
ハムスターを飼育する上でご注意いただきたいのは、いろんな遊具をケージ内に置かないことです。
うんてい遊びや滑り台で落ちたりして、頭部を強打して眼球突出した症例も多いです。
眼球突出の場合は最悪の場合、今回の様に摘出手術が必要となります。
眼球突出で瞼が閉じなくなる場合は、物理的衝撃以外にも結膜炎や眼球腫瘍が背景にあったりする場合もあります。
いずれにせよ、眼球突出したら、眼球を乾燥させないよう生理食塩水で濡らして早く受診して下さい。
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