ジャンガリアンハムスターは体表部の腫瘍が多いとされます。
当院でも多くの皮膚・皮下組織腫瘍の摘出手術を実施しています。
摘出のし易い背部や下腹部であれば、その個所を摘出すればそれで終了ですが、発生した場所によってはそんな簡単なものではありません。
犬猫同様に術後の生活がしっかり送れるものか、検討してから手術を実施させて頂いています。
今回、ご紹介しますのはジャンガリアンハムスターのアキちゃんです。
アキちゃんは左手根関節(手首の関節)から腫瘤が生じて、次第に大きくなったとのことで来院されました。
黄色丸で記した個所ですが、かなり大きくなっています。
アキちゃんは餌を左の前足で捕捉できなくて食生活にも苦労をしているそうです。
まずは患部が腫瘍なのか否かを判定するため、細胞診を行いました。
下が細胞診の顕微鏡写真です。
細菌感染も起こしており、白血球が多く認められる一方で、扁平上皮癌細胞も認められるとの検査センターの報告です。
飼い主様は術後、いつも通りの生活が送れるのか非常に心配されていましたが、悪性の腫瘍を放置して全身に転移することのデメリットも考慮して、断脚に踏み切られました。
手術の模様です。
太い血管を縫合糸で結紮して、前腕骨(橈骨)を少し短めに断脚し、皮膚で橈骨断端部を包みこむように縫合しました(黄色丸)。
麻酔から覚醒したアキちゃんは患部を気にして齧ろうとしています。
出血量も最小に留め、アキちゃんは翌日元気に退院されました。
9日後にアキちゃんは抜糸のため来院されました。
傷口(黄色丸)は下の写真にありますように綺麗に癒合しています。
驚かされたのは、この左前肢を上手に使用して、健常な右前肢とで餌を持って食べているとのことです。
残念ながら回し車で疾走することはできなくなったそうですが。
アキちゃんのケース以外にも何件も断脚手術は実施してきました。
腫瘍や粉砕骨折などが断脚の対象です。
飼い主様的にも、断脚は非常に悲観的に捉えられる方が多いのですが、ハムスターの大部分は、術後に飼育環境に上手に適応しています。
小さいけれど、我々が思っている以上にハムスターは、たくましく生き抜いています!
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