フェレットは非常にいたずら好きで、色んな消化できない異物(ウレタンスポンジとかゴム製品等)を誤飲したりする場合もあります。
飼主様が気づかれてる場合は良いのですが、嘔吐が止まらないとか食欲消失、苦悶の表情を示すとかし始めたら異物誤飲を疑って下さい。
今回、ご紹介するのは飼主様がひょっとしたらスーパーボールを誤飲したかも?と疑って来院されたケースです。
ただ問題なのは、異物誤飲してからの時間経過が5日前とも2週間前とも飼主様から言われますので、どれくらい経過しているのかは不明です。
フェレットの場合は下腹部を触診することで異物の存在を確認することが比較的容易にできます。
今回、明らかに異物の感触が小腸にありましたので、試験的開腹をすることになりました。
非常に気がかりなのは、遊泳運動が始まり、明らかな神経症状が出ている点です。
このまま点滴を継続して内科的療法で症状が改善するのを待つよりは、一刻も早く異物を摘出した方が賢明と考え手術に踏み切りました。
気管挿管して静脈に留置針を入れ点滴を継続し、モニターで心電図、呼吸数、酸素分圧等など万全の準備で手術に臨みました。
黄色の矢印の部分が小腸で閉塞している異物です。
閉塞している部分より上流の小腸(黄色矢印)は内部で出血があり、赤く腫れています。
一方、閉塞部より下流の小腸は腫れもなく、綺麗なピンク色をしています。
おそらくは異物を誤飲してから長い時間にわたって、異物が小腸内を無理やり腸蠕動で下流に押し流され、通過する過程で腸粘膜を障害した模様です。
ある程度の距離は腸蠕動で移動したけれど、これ以上は下流まで移動できない、いわゆる腸の完全閉塞になっています。
メスで腸を切開したところ、腐敗臭と共にボール状の異物が出てきました。
見る限り直径6?位の球体が摘出されました。
飼主様に確認したところ、遊んでいたスーパーボールということでした。
普通のスーパーボールなら適度な弾力性を伴った硬さが触知されるのですが、この異物はすでに鉗子で掴むとブドウの実のごとく裂けそうなくらいの柔らかさでした。
おそらく長い時間、腸管内に存在して消化液に浸食され硬度を失ったものと思われます。
腸管の炎症は認められましたが、腸の壊死までには至っていませんので腸切開のみの処置で閉腹しました。
いつもの異物摘出手術なら、これで終了となるのですが今回はそんなわけにはいきませんでした。
意識が戻ってきません。
心拍も正常ですし、呼吸数、血圧等々も問題ありません。
それでも意識が戻りません。
意識が戻らない状態のまま5時間以上が経過したところで、シバリング(体の震戦)が起こり意識が一旦戻り、希望が少し見えてきました。
残念ながら、その後心拍・呼吸停止が起こり、お亡くなりになりました。
おそらくは、長きにわたった腸閉塞で腸管内で細菌の作り出す毒素が血中に回り、敗血症性ショックに至ったものと推察されます。
異物を誤飲してから、半日程度であれば適切な外科手術を施せば、よほどのことがない限り無事生還できるものと思います。
しかし、腸閉塞が長引けば、色んな命を奪う危険な二次的な病気が起こります。
特に若いフェレットは異物誤飲をしますので、少しでも怪しいと感じたらお早めに受診下さい。
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