フクロモモンガの来院率は、当院では比較的高く、その内訳は自咬症、原虫感染症、爪切りが上位3位を占めます。
機会があるたびに私はフクロモモンガは、デリケートで自咬に至る傾向があることを強調してます。
フクロモモンガはペットとして飼育されてからの年月はまだ浅い種類になるかと思います。
それでも、野生動物であることは変わりありませんので、自分的に気になる体の箇所がありますと舐めはじめ、次には齧り始めるといった行動を起こします。
今回は、自咬症が高じて肢を切断しなくてはならなくなった症例を報告します。
事の発端は、前脚の親指が自咬で壊死を起こし外科手術でカットしたことから始まります。
おそらくは爪が長くて、どこかに引っ掛けて折れたのが気になって自咬に走ったものと思います。
このまま放置すれば、フクロモモンガは感染症に弱い動物なので外科的に患部を離断することを飼主様にお勧めしました。
壊死した幹部をトリミングしています。
皮膚を5‐0の縫合糸で縫いこんでます。
この時点では手術も上手く完了したと思っていました。
患部は本人のストレスを考えて手製のエリザベスカラーはやめました。
代わりに粘着テープを幾重にも巻いて、自咬に備えたつもりだったのですが。
術後10日ぐらいで、患部の腕が大変なことになってる!と来院されました。
どうやら患部を咬み始め、そこから雑菌が侵入して前脚全体が大きく腫れ上がっていました。
既に筋肉は裂けて、骨が一部分露出している状態(黄色い円)でした。
フクロモモンガの切歯は非常に鋭く、真剣に咬むと組織がズタズタになってしまう事を改めて思い知らされました。
とても残念ですが、やむを得ず前脚の断脚を実施することにしました。
断脚後の皮膚縫合の写真です。
断脚手術はフクロモモンガにとって大きなダメージです。
摂食は餌を前脚で掴んで行いますので、本人的に非常に苦労すると思います。
このフクロモモンガ君は手術にもしっかり耐えてくれました。
最初は、とても小さな傷から断脚手術にまで状況が悪化してしまったのは、私のフクロモモンガの自咬への認識が甘かったためと感じています。
今回の手術の前から術後にエリザベスカラーの装着はしてましたが、あまりにフクロモモンガのストレスが大きく、術後の食欲廃絶、カラーが当たる首の外周の皮膚裂傷等、困ったことが多くてできれば装着したくないところです。
しかしながら、必要とあらば心を鬼にしてしっかりエリザベスカラーの装着を実施することに決めました。
今回の写真は多少ショッキングな内容かもしれませんが、少なくともフクロモモンガを飼育されている飼主様については、自咬症で傷口はここまで酷くなるということを認識していただければ幸いです。
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