犬の異物誤飲(その13 パフ)
2015-05-12 16:42
有限会社もねペットクリニック
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こんにちは 院長の伊藤です。

4月からの繁忙期にかまけて、ブログの更新が1か月近くできずにいました。

院長は再度入院したのかと心配される飼主様もおみえで、ご心配おかけしました。

私もスタッフも元気で、臨床の現場で日々精進しております。

その間、疾病の紹介ネタが溜まりに溜まりまして、これから順次ご紹介させて頂きたいと思います。


さて、本日ご紹介しますのは、犬の異物誤飲シリーズの第13弾目になります。

これまでにも様々な犬が誤飲する異物をご紹介してきましたが、今回は化粧用のパフです。

マルチーズのひなちゃん(雌、5か月、1.9kg)は飼主様の化粧用パフを食べてしまったとのことで来院されました。





パフの大きさは5?位はあるかもしれません。

嘔吐させる薬を飲ませて、口から吐出させるにはちょっと厳しいように思えます。

ひなちゃんは体重が2kgもありませんので、もし嘔吐剤を投薬して食道で閉塞してしまったら大変です。



早速、レントゲン撮影を実施します。

下のレントゲン写真の黄色丸が誤飲したパフと思われます。

胃内の大部分をパフが占めている感があります。





このような場合は、最善策として胃切開を選択します。

まだ5か月令の幼犬なので、可哀そうに思われるかもしれませんが胃の中で異物が停留している時が摘出のタイミングとしてはベストです。

飼い主様の了解をいただき、胃切開手術を行います。

ひなちゃんに気管挿管をしてガス麻酔をかけます。



メスを入れる部位を剃毛して消毒してます。



麻酔に関わる生体情報をモニターで確認します。





メスを入れて皮膚切開をします。



胃を体外に出します。

若いだけあって、非常にきれいな胃です。

この時、胃体を支持するために縫合糸をかけます。



パフが存在すると思われる箇所にメスを入れます。



切開した部位は極力小さく留めます。

患部から鉗子を入れてたところ、弾力性のある異物を確認しました。

パフと思しき物体を鉗子で把持します。

下写真にあるようにパフが胃から頭を出し始めています。





胃の中はパフでその内腔は一杯になっています。

胃切開が正解でした。





パフを胃から摘出しました。



次に切開した胃を縫合していきます。

縫合糸はモノフィラメントの吸収性縫合糸を使用します。

縫合は丁寧に確実に行います。





これで胃縫合は終了です。

胃を腹腔に戻し、腹筋と皮下脂肪、皮膚を順次縫合していきます。



下は皮膚縫合した手術終了時の写真です。



ひなちゃんは術後の経過も良好です。



胃切開術後は24時間は絶飲食が必要で、その間は点滴を行います。

この手術は酸塩基平衡や電解質のバランスが崩れやすいので、しばらく点滴と流動食で対応していきます。

下写真は摘出したパフです。



生後1歳未満は、どんなものにも興味を持ちます。

特に飼主様が身につけたり、匂いが付いているものは口に入れたいという衝動を持ちます。

今回のパフはその最たるものでしょう。

飼い主様がその場を見ているから、今回速やかな対応が取れました。

これが一人で留守番中であれば、こちらも確信が持てないので、バリウムを飲んでもらい消化管造影をして精密検査になったりする場合もあり得ます。

まずは、ワンちゃんの口の届く所に興味を持つ物体、特に誤飲したら問題を起こしそうな物は置かないことです。

ひなちゃん、お疲れ様でした。








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