こんにちは、獣医師の苅谷です。
暑い日が続きますが、巷では甲子園が開幕しましたね。
炎天下の中ですが、気候にも負けずに実力、それ以上の力を出して戦っている高校球児をみていると勇気づけられるますね。
前回、
肝臓の病気についてお話ししたので、今回は肝臓にまつわる検査についてお話しします。
肝臓に関係する検査には以下のものが挙げられます。
まずは血液検査から始めます。
血液検査では・・・
酵素系(ALT、AST、ALP、γーGTP)や総ビリルビン、代謝系(血糖、T-Chol(総コレステロール))、総胆汁酸、尿素窒素、アンモニア、アルブミンといった項目をみていきます。
春の健康診断でお馴染の項目もあれば、少し聞きなれない項目もあります。
まずは酵素系です。
ALTは肝臓の細胞に多く含まれている酵素であるため、細胞が破壊されると上昇し、肝臓が悪くなってきていることがわかります。
ASTも肝臓の細胞に含まれている酵素ですが、その他にも心筋や骨格筋、赤血球といった細胞にも含まれているため、単独での上昇であるのならば、その他の疾患を考えないといけませんが、ALTの上昇を認める場合は肝臓に問題があると考えられます。
ALPはいろいろな臓器の細胞に分布しており、ステロイドといった薬剤により誘導されやすい酵素です。
その為、肝胆道系の病気や骨疾患、内分泌の疾患でも上昇してくるため、上記のALTやASTと組み合わせて考えていく必要があります。
γ‐GTPは胆汁がうまく排泄できなくなったり、薬剤(除草剤や肝臓に障害を与える薬)による肝障害がある場合に上昇します。
つまり薬剤性肝障害や胆石や胆泥といった胆汁の排泄が滞る病気で値が高くなってきます。
次に総ビリルビンです。
この値が上昇してくる原因といしては肝臓に問題がある場合に加えて、胆汁がうまく排泄できなかったり、血液の成分である赤血球が血管内でたくさん破壊されてしまった場合があり、ある値を超えると黄疸が出てきます。
そのため、総ビリルビン単独では判断をすることができず、肝酵素系や血液塗抹などで判断する必要が出てきます。
その他の項目は肝臓で作られたり、排泄するために取り除かれたりする成分です。
肝臓に問題があった場合に上昇してくる項目は総胆汁酸とアンモニア、逆に低下していく項目はその他の項目(血糖、T-chol、BUN、アルブミン)となります。
総胆汁酸は肝臓にてコレステロールから作られる物質で本来あまり体全体に流れる血液(末梢血)に出てこない物質ですが。肝臓から消化管(腸管)に排泄されることに障害があると末梢血に出てくるため、肝臓や胆道に問題があることがわかります。
アンモニアはタンパク質などを体の中で使用(代謝)したときにできる有害物質(神経毒)であり、肝臓で解毒され、尿素窒素(BUN)に代わり尿として排泄されるようにします。
しかし、肝臓に問題があると解毒することができなくなってくるため、アンモニアの値は上昇し、BUNの値は低下してきます。
血液検査の項目では最後となりますが、肝臓ではエネルギーを作ったり、他の臓器のエネルギー源となる物質を作って送ったり、物質を運んだり、血を止めるために働くタンパク質を作ったりしています。
そのため、それに関係する血糖やT-chol、アルブミンは肝臓が悪くなると低下します。
また、出血した場合、血を止めるためのタンパクも作れなくなってしまうため、出血をしたら血が止まらなくなるといった血液の凝固にも異常が出てきます。
どうしても肝臓といった内臓は直接眼で見ることができない為、まずはこういった血液検査で何か問題があるかないかを探っていきます。
ただ病気は一つの病気が単独で起きているとは限らず、その他の病気も併発している可能性もあります。
そういった場合に画像診断(X線検査、超音波検査、CT)、肝生検、腹水があればその検査を加えておこなっていきます。
次回は残りの検査についてお話ししていきたいと思います。
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