こんにちは、獣医師の苅谷です。
台風11号が過ぎ去ったあとから梅雨が明け、台風が温かい空気を運んできたみたいで、連日真夏日が続く蒸し暑い日が続きますね。
この時期になってくると熱中症や外耳炎になりやすくなるので注意が必要ですね。
前々回、
肝臓の役割についてお話ししましたので、今回は肝臓の起こりうる病気や問題―肝臓病についてお話しします。
肝臓が悪くなってくると食欲不振や体重減少などから始まり、ひどくなってくると黄疸や毒素が蓄積されるため神経症状(肝性脳症)などの症状が出てきます。
さて、肝臓病となるものにはどのようなものがあるのでしょうか。
有害な化学物質とはみなさんご存知だと思いますが、除草剤や農作物に使用する駆虫剤等のことです。
肝臓の役割の時にも触れましたが、摂取した有害物質が腸から吸収されて次に有害物質にさらされる場所は肝臓でその解毒のすべてを担っているため、かなりの負担が肝臓にかかります。
肝臓が対応できる範囲の量であれば、うまく処理をすることができるのですが、できない場合は急性肝障害の症状が出てきますので、有害物質の体外への排除、肝臓の保護を行っていく必要があります。
次の感染症です。
犬の混合ワクチンでお馴染の犬伝染性肝炎やレプトスピラ症、全身の細菌感染症である子宮蓄膿症、猫では猫伝染性腹膜炎に伴って肝炎が起こります。
ワクチンで予防することができるものであれば、予防するに越したことではないのですが、細菌感染ならば抗生剤の投与、子宮蓄膿症ならば子宮の全摘出、ウイルスによる感染症にかかってしまった場合は基本対症療法を行い、その子の体力や免疫に頑張ってもらう必要があります。
そして、これからの時期に最も増えてくる可能性の高い熱中症です。
体温は本来であれば一定(犬・猫ならばおおよそ38〜39.5℃くらい)に保たれていますが、高温になってきて体温が一定に保てなくなってくると体温が上昇し始めます。
体はタンパク質でできているため、体温が上がり始めると熱変性を起こし、肝臓を含め様々な臓器が機能しなくなります。
肝臓は再生力が強いため、回復が見込めますが、神経系などの再生力が非常に弱い部分は熱中症になってしまうと後遺症が残ってしまう可能性があります。
熱中症はならないようにしっかり水分をとり、できるだけ涼しい環境(動物だと25℃位以下)に保つことが必要だと思います。
さて、私たちが日々使用している薬も一つ使い方を間違えてしまうと肝臓に問題を与えてしまいます。
薬は化学物質なので等しく肝臓で解毒の作用を受けますが、中には肝臓に毒性を与えるものであったり、肝臓の解毒の作用を阻害するものであったり、阻害するのではなく逆の作用を促すものもあります。
このような薬には抗菌剤や抗真菌薬、ステロイド剤、抗てんかん薬、抗がん剤などがありますが、長期使用または過剰使用になってしまうと一番最初に登場した有害物質と同じ状況に陥ります。
こうならないように薬の選択、休薬期間などを考えて使用していく必要があります。
代謝・内分泌疾患についてですが、肝臓の役割の一つにエネルギーの代謝があります。
糖尿病やクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、肝リピドーシスといった代謝・内分泌疾患は体内の代謝に異常が起こるため、代謝の大部分を担う肝臓に負担がかかるため、肝臓に異常が出てきます。
先に異常な代謝・内分泌の状態を治さないことには肝臓の状態を良くすることはできませんので、そこに即した治療を行っていきます。
腫瘍は言わずもながら肝臓に機能しない新生物ができるため、正常な肝臓の機能が阻害されます。
治療は基本腫瘍の摘出を行うか、腫瘍の種類によっては抗がん剤の使用も考慮します。
遺伝疾患では肝臓自体が正常な機能を果たすことができなくなるため、症状が現れてきます。
肝臓病は以上挙げた原因の他にもいろいろとあります。
肝臓の病気は症状が現れにくいため、発見することが難しいですが、定期的な血液検査でその兆候を見つけることはできます。
また食生活をしっかりとすることで予防することのできるものもあります。
次回は肝臓病の検査等についてお話しします。
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