こんにちは、新米獣医の苅谷です。
先日誕生日を迎え、また一つ歳を重ねました。
歳を重ねるにつれて時間の流れが速くなっていく、そんな風に感じます。
さて、本日は今週会陰ヘルニアの手術に立ち会ったのでそれに関して少しお話します。
まず会陰とはどの部分かと端的に言うと・・・
肛門周りです。
ここの筋肉にヘルニア孔ができると直腸や膀胱といった肛門に近い骨盤内の臓器が出てしまい、便秘になったり、渋りを繰り返したり、おしっこがしづらくなります。
さて会陰ヘルニアが起こるとこのような感じになります。
お尻の周りに普通ではありえないコブができていますね。
今回の場合では直腸のみがヘルニア孔より出ており、その部分に便が溜まると野球の軟式のボールのような硬さになります。
このような硬さになると摘便も一苦労になります。
これより会陰ヘルニア整復手術に入っていくのですが・・・
手術方法については獣医師によって色々とあり、
過去の院長のブログにてその方法の一部の紹介もあります。
今回の詳しい手術の内容はおいておいて
会陰ヘルニア整復術の一番の肝となるヘルニア孔の整復の場面ですが・・・
このように孔が開いている状態がしっかりと分かりますね。
今回の整復方法ですが、外肛門括約筋と仙結節靭帯を非吸糸で縫合し締めあげるという方法でした。
外肛門括約筋は傍から見ていてもわかりましたが、仙結節靭帯は他の筋肉の内側に位置しており、外側からは確認できませんでした。
術者である院長曰く、仙結節靭帯は触ってみればわかるとのことですので、こればかりは体験するしかないようです。
さてこの仙結節靭帯に針を用いて糸を通すわけですが・・・
この靭帯のすぐそばを動脈や神経が走っています。
1つ間違えると大惨事になってしまいます。
そこで院長は少し針先にヤスリがけをしね先端を鈍にすることで、血管や神経を針から避けるようにして出血もなく、糸を通しました。
縫合はそれぞれの糸の張り具合を考慮しなければならないため、最後にまとめて行います。
そして、手術も終わり、その後のお尻周りの状態は・・・
このように以前出ていた部分はもとの状態に戻り、術創を残し、きれいになっています。
当院のホームページの
避妊・去勢のページに紹介されていますが、この会陰ヘルニアは早期の去勢により予防することができます。
今まで観てきた去勢の手術は全てが短時間で手術が終了していましたが、今回のこの会陰ヘルニアの手術は去勢の何倍もの時間がかかりました。
加えてこの疾患の発症する時期は高齢になってからが多いため、その分麻酔のリスクが高くなります。
繁殖を考えていないのであれば、去勢を薦めようと改めて思う手術の1つになりました。
今回の手術は私が当院で勤務してからの中の手術の中で最も時間がかかった手術でした。
また、仙結節靭帯に血管や神経を傷つけずに糸を通すことに関して、傍からでもその難しさ、指先の感覚が重要になってくると感じました。
最終的には自分でもこのような手術をこなせるように精進していきたいと思います。
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